今回はベトナムで飲食店の物件を探す方法、コツについてエヌアセットベトナムの西村さんにお話を伺いました!
まず知っておきたい!飲食物件の種類・特徴・選び方のコツ
インターン生
最初にエヌアセットベトナムについて教えてください。
西村さん(以下:西村)
2011年9月に設立した100%日本出資の日系現地法人です。不動産仲介を専門に行っていて、主に賃貸仲介、売買仲介、一部の大手企業向け不動産コンサルティング、レンタルオフィス業などを行っています。ホーチミン、ビンズン、ハイフォン、ハノイ、ダナンに拠点を構えています。
インターン生
エヌアセットベトナムでは、飲食店向けにどのような物件を取り扱っていますか。
西村
当社では物件を4パターンで区分分けをしています。
路面店(一棟/一軒)
路面店はベトナムで1番主流の物件、一棟/一軒借りの物件です。マーケットに最も多く、アプローチが行いやすいため、立地が良いものは即手付金支払いで物件を抑えるなどのスピード感が求められます。
メリット
視認性が高く、比較的自由な内装手配が可能です。
デメリット
人気のエリアなどの場合、即断・即決が求められる為、熟考ができません。また、建物のメンテナンスや昨今の消防法改正に伴う改修工事コストが発生する可能性があります。また、建物によっては、全てのフロアを有効利用できないケースもあります。
路面店(フロア貸し)
路面店(フロア貸し)とは複合ビルのワンフロアを借りる契約形態です。日本では一般的かと思いますが、ベトナムのマーケットには少ない契約形態です。一般的には貸主が法人になるケースが多い為、オフィスの賃貸借契約をイメージした進め方ができる傾向にあります。
メリット
必要フロアのみ利用でき、貸主の信頼度も比較的高い傾向にあります。
デメリット
人気のエリアの場合、契約締結までのプロセスが早いため熟考ができません。また、中層階であると視認性が低くなります。
ショップスペース
ショップスペースとはコンドミニアム(分譲マンション)やオフィスの商用スペースを指します。新築コンドミニアム・オフィスの供給増に伴い、近年マーケットに多く供給されてきています。
メリット
必要フロアのみ利用でき、貸主の信頼度も比較的高い傾向にあります。管理会社が共用部の管理を行います。
デメリット
賃料単価は比較的高く、管理規約などによる営業・内装工事などの制限があります。
リテールスペース
リテールスペースとはイオンモールや高島屋などのショッピングモール内のスペースを指します。貸主属性や信頼度は最も高くなり、関連書類も法的に問題がないものが提出される為、大手企業が社内稟議・調整を行いやすい傾向にあります。但し、近年は稼働率も非常に高く、テナント審査が入る為、会社情報・店舗、商品、ブランドイメージなどの資料(英語版)を事前準備する必要があります。
メリット
大手企業の社内稟議・調整が行い易い関連書類が提出され、交渉を重ねながら契約締結を進められる傾向にあります。
デメリット
賃料単価は比較的高く、ショッピングモールの営業規則による営業・内装工事などの制限があります。
インターン生
それぞれどのような違いがありますか。
西村
賃料単価は、勿論エリアにもよりますが、一軒借り、フロア貸し、ショップスペース、リテールスペースの順に高くなる傾向にあります。逆に物件を抑える為のスピード感は緩やかになる傾向にあります。
インターン生
そういった違いがあるんですね、こちらの4パターンをクライアントの要望に合わせて紹介し分けていらっしゃるんですか。
西村
はい、クライアントのご要望をお聞きしニーズにあったパターンで物件を紹介しています。多くのリクエストは路面店で出店したいというご要望を受けますが、例えば、決済権限者の方が日本にいて、路面店の希望エリアの情報が入ったら、出張スケジュールを調整して物件を確認するというケースでは、確実に他の方に物件が抑えられてしまいますので、そのような進め方はベトナムでは行えないなど、マーケットの状況、商習慣のご説明から入り、クライアントが対策できることできないことを加味しながら、最適なパターンを決め、ご一緒に物件探しを奔走するようなイメージです。
インターン生
直近で消防法が改正されたとききましたが……
西村
消防法の改正により、設計承認証明書や消防計画書を提出し承認を受けることが必要になりました。ただ、貸主によっては飲食店の出店に必要な消防関係の書類が出てこないケースもあります。その為、特に路面店の際には、契約締結前に必ず内装工事会社さんとご一緒に現況確認を行い、関連書類の確認を行わないと、トラブルに発展する可能性がありますのでご注意下さい。
インターン生
エヌアセットベトナムの強みを教えてください。
西村
住宅やオフィスの賃貸の不動産仲介を行っている会社さんは日系でも多くありますが、今回のご相談の様な店舗や工場、そして売買仲介まで幅広く行っている会社は少ないかと思います。その為、不動産でも対応できるエリアと分野が幅広いのが当社の強みかと思います。
王道・レタントン?それともタオディエン?人気エリアの現実と向き合う
インターン生
物件選びで、重要な条件または基準を教えてください。
西村
ターゲットとコンセプト、予算を明確にすることでしょうか。そちらがクリアになっていると、エリアや物件の選択肢も絞れてきますので、当社もご紹介が行い易くなります。
インターン生
日本との物件探しの違いを教えてください。
西村
ソフト面でいうと、良い物件はすぐに抑えられてしまうので、迅速な決断をしなければいけない点ですかね。ハード面でいうと、路面店などであれば特に、開業に必要な関連書類が不足していることが多々ありますので、その点をどのようにクリアしていくかです。オーナー企業であれば、えいやで進められるかと思いますが、昨今は特に日本の上場企業による進出も目立ってきていますので、コンプライアンス上の問題などもあります。この点は、どこまでリスクを許容していくか、日本側のコンプライアンスをクリアしていくか、諸所調整が必要なところもあり、多くの大手進出企業の店舗開発担当の方は、課題認識されているところかと思います。
インターン生
日本のような敷金、礼金はありますか。
西村
敷金は当地では保証金(デポジット)という扱いになり、基本的には南部では3か月と設定しているケースが多いです。(一部それ以上求められるケースもありますので、交渉が必要です)礼金の商習慣はありません。
インターン生
日系の飲食店さんが出店したいという人気エリアを教えてください。
西村
日本人がターゲットなのであれば、日本食レストランが多いレタントンエリア、ファンビッチャン通りがやはり人気です。よくリクエストを頂きます。ベトナム人やその他外国人がターゲットの場合は、路面店だとタオディエンエリアなどのリクエストも良く頂きます。この点は、やはりターゲットやコンセプト、賃料予算で選択できるところ、できないところもありますので、ご要望を良くヒアリングさせて頂いた中でエリアのご提案をしています。
インターン生
大手に限らず、日本人ターゲットのお店はレタントンに多いのでしょうか?
西村
そうですね。やはりレタントンが王道であり、人気が高いです。しかし、賃貸料が年々上がっているので、一般的な飲食店では検討が難しいエリアになりつつあると思います。大通りだと最低でも5,000ドル〜6,000ドル(日本円100万円近い)をみて頂かないと、まずご紹介は難しくなります。良くリクエストを頂くエリアではありますが、直近の賃料の状況をお伝えすると、作戦の練り直しを余儀なくされるケースも多いのではないかと思います。
インターン生
レタントンには日本人街と呼ばれるだけあり、日系の飲食店が多い印象があります。そのレタントンのメリットとデメリットを教えてください。
西村
メリットは日本人だけでなくベトナム人・外国人に良く知られていることから、知名度が抜群に高いことです。日系駐在員の会食場所は、今もやはりレタントンに集合することがメジャーなので、店がオープンした場合は、特に広告展開しなくても、日本人には自然に広まっていくかと思います。(勿論、選ばれるお店になるかどうかは別議論ですが)
デメリットはやはり賃貸料です、あまりに高いので(笑)。また、多くの日本食レストランが並びますので、競合との差別化も選ばれるかどうかのポイントになってくるかと思います。
“今すぐ動け”が通用しない?賃貸契約のリアルと準備の逆算思考
インターン生
理想の物件を探すのにどのくらい前から探すべきでしょうか。
西村
物件はタイミングもありますので、半年以上かけても理想の物件が見つからないケースもあれば、ご縁があってすぐに見つかるケースもありますし、クライアントが多店舗展開のタイミングなのか、それとも新規進出なのか、開業準備が既に出来ているのか、それともこれからなのかでも、物件探しのタイミングが異なってくるかと思います。
一般的には路面店の場合には、即断・即決で契約締結を行う必要があり、多くはフリーレントの設定が行えない為、新規進出のケースで、開業準備も何もできていない状態だと、ただひたすらに空家賃が発生してしまうことになってしまいます。その為、路面店を検討する場合には、即賃貸料が発生するということを念頭に、逆算して物件探しをいつからスタートするのがいいか検討して頂くということになるかと思います。
一方で、リテールスペースの場合には、多くが現在は満室稼働という状況ですので、将来的な空き予定スペースの検討からスタートします。(例えば6カ月後に空く予定スペースのご紹介というイメージ)この場合、勿論賃貸料の発生は6カ月後からとなりますので、物件の決定後に、諸所準備を進めらえるというメリットもあり、大手企業の新規進出に最適なスペースだと思います。
インターン生
飲食店向け物件の通常の契約期間はどのくらいか教えてください。
西村
通常は3年契約がベースとなり、そこから更に長期契約の交渉を行うというイメージです。
インターン生
内見をする時に特に見るべきポイントがあれば教えていただきたいです。
西村
1つは、人の流入ですね。予定する営業時間内にどれくらいの人が、どこの国の人が通るのかをよく観察するべきかと思います。もう1つはハード面で、内装会社さんと一緒に現地確認を行い、内装工事にどれくらいの費用がかかるか試算して頂き、早急に初期コストを試算する点もポイントかと思います。
インターン生
駐車場や駐輪場の確保は必要でしょうか。
西村
クライアントのターゲット想定次第かと思います。路面店の場合には多くは所謂青空駐車場になります。
トラブルを防ぐのは書類と信頼──サブリース、違法建築、言語の壁への備え
インターン生
貸主が直接の所有者ではなく、転貸(サブリース)の場合の注意事項はございますか。
西村
まず権利証(ピンクブック)の確認を行う中で、相対している人が所有者ではない場合、その関係性の確認は必要です。(両親が所有者で、その息子・娘が交渉窓口になっているなど)次に、相対している方が全くの第三者で、実は転貸を行っているケースでは、所有者と転貸者との契約期間の確認(実際の賃貸料については開示しないケースが大半)や、賃貸料の金額にもよりますが、所有者との面談も必要なケースもあります。所有者と転貸者がトラブルになって、契約が解除されるケースもありますので、余程良い物件ではない限りは、サブリースでの店舗物件の取得は出来れば避けたいところです。
インターン生
違法建築ではないかの確認も必要ですよね。
西村
必要ですね、違法建築ではなく、既存不適格という言い方が正しいのかもしれませんが、いずれにせよ、許認可上は4階建て(ピンクブックにも4階建ての記載)なのに実際は増築して5階建てになっているケースは当時の商慣習上、山の様にあります。これまではそのような物件であっても、諸所調整を行い、営業許可を取得できていたものが、年々当局の確認が厳しくなっていくことは確かだと思います。その為、この点もどこまでリスクを許容できるかという話になってきますので、オーナー企業は即断できるが、コンプライアンスに厳しい企業だと、そうもいかないという、現場で頭を悩ませるトラブル事項の1つかと思います。
インターン生
ベトナム語と日本語、言語の壁による貸主とのトラブルを回避するための方法があれば教えていただきたいです。
西村
1つは信頼のおけるベトナム人スタッフ又はパートナーを一早く構築していくことかと思います。貸主との折衝だけでなく、飲食店を経営していく中で、当局(公安や消防局などなど)や近隣との折衝なども発生してきますので、その切り盛りを任せられるベトナム人スタッフを一早く加入していただくことかと思います。対貸主、貸主関係者だけの話であれば、ショップやリテールスペースは基本的にグローバル対応が出来る体制がある為、言語は英語をベースとして進めることができるので、海外進出を担当されている方であれば、ご自身で進めることもできると思います。
インターン生
最後に、ベトナムで飲食店物件探しをしている方にアドバイスをお願いします!
西村
今回ご説明した4パターンの物件のなかで、それぞれ特徴があるので、どのパターンが自分(自社)に合っているかご確認頂き、ターゲット、コンセプト、予算、そして希望エリアをある程度まとめて、当社のような不動産仲介会社にリクエストして頂ければ、様々な物件情報を提案して頂けるのではないかなと思います。当社もご依頼頂いた以上は、繁盛して頂き、多店舗展開して頂きたいと思っていますので、知恵を絞って最適な物件をご提案できるように頑張りますので、是非何かあればお声がけください。
インターン生
貴重なお時間ありがとうござました!
※上記に掲載されている情報は、掲載日(2025/05/16)現在の情報です。ご覧になった時点で内容が変更になっている可能性がありますので、各店舗へお問い合わせください。

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